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プログラミング教育が始まった理由

2024年10月14日

こんにちは、本多です。
このブログでは、プログラミングや教育のことについて書いていきます。

さて今回は、小学校でプログラミング教育が始まった理由について書いていきます。

プログラミング教育の始まり

急に始まったプログラミング教育。その耳慣れない言葉に戸惑った方も多いのではないでしょうか。
また、子どもに本当に必要なのかと考える方も多くいるのではないかと思います。

そんなプログラミング教育は、2020年度から小学校で必修化となり、始まりました。
始まった理由について、文部科学省から出ている「小学校プログラミング教育の手引き」にその1つが記述されています。一部抜粋して紹介します。

あらゆる活動において、コンピュータなどの情報機器やサービスとそれによってもたらされる情報とを適切に選択・活用して問題を解決していくことが不可欠な社会が到来しつつあります。
プログラミングによって、コンピュータに自分が求める動作をさせることができるとともに、コンピュータの仕組みの一端をうかがい知ることができるので、コンピュータが「魔法の箱」ではなくなり、より主体的に活用することにつながります。
(文部科学省(2020)小学校プログラミング教育の手引(第三版)p.1)

この文を見るに、現代社会がコンピュータを使える人間を求めており、それが発端でプログラミング教育が始まっていることが分かります。
また、プログラミングを行う理由としても、コンピュータを主体的に活用することが挙げられています。

では、これだけの理由でプログラミング教育を行うことになったのでしょうか
これだけの理由で新しい教育が行われるのであれば、税金や投資の教育、道路交通法の教育なども盛んに行われているはずです。しかし、それらとは大きな隔たりがあります。

教育には4つの”必要”がある

詳細は割愛しますが、義務教育は大きく分けて4つの”必要”によって選別されます。
それは以下の4つです。(言葉を平易にしています)
① より高度な学問を行うにあたって必要な教養であるか
② 社会を担っていくにあたって必要であるか
③ 発達段階や心理的に必要であるか
④ 自分自身や人間を考えるにあたって必要であるか

先ほどの文科省の引用は、主に「② 社会を担っていくにあたって必要であるか」に相当すると考えられます。
現代の社会はコンピュータなしには成立せず、コンピュータを主体的に活用できることが社会人として求められているからです。
今日では、パワーポイントやそれに類するソフトを用いて発表を行う活動が、小学校で頻繁に行われていることからも、その”必要”が垣間見えます。

仮にプログラミング教育が②の理由のみであれば、教育には取り入れられません。
多くの教科は①~④を全て満たしていることが多いです。
プログラミング教育はどのような面で残りの①③④の”必要”を満たしているのでしょうか。

まず、「① より高度な学問を行うにあたって必要な教養であるか」についてです。
プログラミングにおける高度な学問は、大学やそれ以上での情報系を指すと言ってよいでしょう。
情報系の学部、特に情報学部は、1980年に文教大学で設立されたのが最初となります。他の学部と比べると最近始まったものであることから、初等教育から進めていくことの必要性がこの40年を経て認知されるようになったと予想できます。また、現在では情報系学部に限らず、プログラミングは様々な研究などで活用されています。そういった所も含め、プログラミングにおいて高度な学問の基礎が義務教育で求められていると考えられます。

続いて「③ 発達段階や心理的に必要であるか」についてです。
この部分は、初等プログラミング教育の根幹であるプログラミング的思考や、後述する「学びに向かう力」を表しています。文科省からも、発達の段階に即して、「プログラミング的思考」を育成することが目標として掲げられています。プログラミング的思考の詳細については別記事としますが、これらを育成していくことがこの部分の”必要”にあたると考えられます。

最後に「④ 自分自身や人間を考えるにあたって必要であるか」についてです。
コンピュータやプログラミングを学ぶということは、相対的に人間を見つめることでもあります。文科省はプログラミング教育を通し、「人間らしさとは何か」、「人間にしかできないこととは何か」、「人間としてどのように暮らしていけばいいのだろうか」など、自分の生き方を考え直すことも期待しており、ここにもプログラミング教育の必要性が表れていると考えられます。

“必要”は3つの力へ反映される

よってこのような理由からプログラミング教育が行われるようになりました。
これらの”必要”は、文科省の掲げる初等プログラミング教育で育む3つの力にも、色濃く反映されています。

【知識及び技能】身近な生活でコンピュータが活用されていることや、問題の解決には必要な手順があることに気付くこと。
【思考力、判断力、表現力等】発達の段階に即して、「プログラミング的思考」を育成すること。
【学びに向かう力、人間性等】発達の段階に即して、コンピュータの働きを、よりよい人生や社会づくりに生かそうとする態度を涵養すること。
(文部科学省(2020)小学校プログラミング教育の手引(第三版)p.9)

これらから分かることは、子どもや社会にとっての”必要”がありプログラミング教育が採択され、その”必要”によって目標が決定されていることです。
プログラミング教育と名乗る上ではこれら3つの目標を達成することが最低条件であり、本校もこの目標を基にしてカリキュラムや授業内容を決定しています。

この記事は以上となります。
今回は、プログラミング教育が始まった理由について解説しました。
全ての教科においてその必要性は議論され、学校現場が授業を行う根拠となっています。
プログラミング教育もその例に漏れず、上記のような必要性が議論され、小学校での教育に必要だという結論に至り、導入されました。
次回は、プログラミング教育で育む3つの力について、またその中でも重要な「プログラミング的思考」について解説したいと思います。
ここまでお読みいただきありがとうございました。

(文責 本多)

引用文献
文部科学省(2020),小学校プログラミング教育の手引(第三版)